日本経済はインフレではなくインフレに苦しむ
最後に物価の先行きについて論じる。今回の日本経済悪化の主因が、供給制約によるものであるなら、需給ギャップ(実際のGDP 一潜在GDP)は低下ではなく、むしろ上昇するのであり、そのことによってデフレ圧力は低下する可能性がある。そうしたなかで、復興需要が出てくると、供給制約はさらに強まる。静学的な経済モデルで考えれば、供給制約によって復興需要が有効需要になり得ないということは、数量調整が生じるのではなく、価格調整がなされるということであり、その場合、インフレ圧力が生じる。
ただ、人々が将来予想を前提に行動する実際の経済は相当に複雑である。動学的なモデルで考えなければならない。震災によって企業や家計の成長期待が低下すれば、設備投資や消費が落ち込み、短期的には需給ギャップがむしろ悪化し、デフレ圧力が強まることもあり得る。
生産年齢人口減少の物価への影響を思い出していただきたい。生産年齢人口の減少もいわば供給制約要因であるが、実際には成長期待の低下を通じて、インフレ圧力ではなく、デフレ圧力を生んだと考えられる。原発問題が長引けば、日本の衰退が意識され、成長期待が低下することで総需要が悪化し、むしろデフレ圧力が生じる可能性もある。物価にはどのように影響するかわからないというのが正直なところである。
現在は、供給能力低下とともに人々にセンチメント悪化によって総需要も大幅に悪化している。しかし、人々のセンチメントが徐々に改善し、総需要が持ち直してくれば、供給制約が強く意識されるようになるであろう。その時、物価が上昇するということなのかもしれない。
為替相場(FX)では市場序盤は、ECBによる利上げ期待や、ギリシャ債務再編をめぐる懸念が後退したことなどを背景に、ユーロを中心に主要通貨は対米ドル、対円で上昇。中盤、欧米主要株価指数の上げ幅が拡大する中、為替市場では円売り・米ドル売りが優勢となり、豪ドル、NZドル、カナダドルなど資源国通貨が対円、対米ドルで本日高値を更新した。しかし、その後米長期金利の利回り低下を背景に、ドル/円が81円台後半から半ばへ下落し本日安値を更新すると共に、クロス円の上げ幅が縮小。